大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(ラ)582号 決定

(一) 新潟地方裁判所長岡支部は、同庁昭和三三年(ケ)第七五号不動産競売事件につき、昭和三四年四月二七日附で、競落人棚村重信(相手方)の申請により、抗告人に対して、競落不動産たる長岡市表町一丁目表一ノ町三四〇番家屋番号同町三四〇番一木造板葺二階建店舖一棟建坪一八坪五合外二階一一坪附属建物木造板葺平家物置一棟建坪一坪五合を、右競落人に明渡すべき旨を命じた不動産引渡命令(同庁昭和三四年(ヲ)第四〇号)を発したところ、抗告人は、同年五月一二日に至り、前記裁判所に、右不動産引渡命令に対する請求異議の訴(前同裁判所支部昭和三四年(ワ)第一二五号事件)を提起し、かつ、その訴を提起したことを理由として、右命令の執行停止を求める申立をした。これが本件強制執行停止の申立である。

(二) 右裁判所は、抗告人の右申立を認容して、同年五月一二日一旦右不動産引渡命令の執行を、右請求異議訴訟の本案判決をするまで、停止する旨の決定をしたが、翌一三日、相手方が、これに対して即時抗告を申立てるや、右裁判所は、再度の考案により、同年七月一〇日附で、右強制執行停止決定を取消す旨の決定をした。これが原決定であつて、抗告人は、即日(右七月一〇日)本件抗告に及んだ。

(三) しかるに、右請求異議の訴訟において、原告(抗告人)は第一回口頭弁論のなされた後である昭和三四年七月二二日「請求の趣旨及び原因変更の申立」と題する書面を裁判所に提出したが、その書面には、従来の、前記不動産引渡命令の執行不許を求める請求の趣旨を「被告は原告に対し金五〇万円及びこの書面送達の翌日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。」との請求の趣旨に変更し、その請求の原因も、「前記(一)(二)に認定のような経過で、原告が不動産引渡命令の執行停止決定を得、これに対して被告(相手方)が即時抗告をし、裁判所は右停止決定を取消す決定をしたが、原告はこの決定に対して即時抗告の申立をしたから、右取消決定の執行は停止され、結局、前記不動産引渡命令の執行停止決定は依然としてその効力を持続し、右不動産引渡命令はその執行をなし得ないものである。しかるに、被告は、執行吏に同命令の執行を委任し、昭和三四年七月一一日該執行吏と共に競落建物の現場に臨んでその執行を開始し、原告の代理人駒形弁護士が、本件抗告申立の事実を説明し、なお、裁判所の本件抗告申立の証明書を示して右執行の停止方を求めたにかゝわらず、右執行を続け、競落建物たる店舖を取毀してしまい、原告は、これによつて精神上物質上多大の損害を被つたので、本訴においてその賠償を求めるものである」と変更する旨の記載があり、右書面は、当時被告に送達され、次いで同年九月一〇日の第二回口頭弁論期日において原告代理人が右書面に基いて陳述したが、これに対して被告は何ら異議を申立てず、爾来原被告とも、専ら、右変更後の新訴についてのみ弁論をしているものである。

そして、右(三)の事実によれば、右訴訟において、抗告人のした請求の趣旨及び原因の変更により、旧訴たる請求異議の訴は、取下によつて既に終了したものであることが明かである。

そうだとすれば、本件不動産引渡命令(すなわち民事訴訟法第六八七条第三項による不動産引渡命令)に対して、請求異議の訴を起し得るかどうかの点につき、仮りに、抗告人のように積極説をとるとしても、既にその請求異議の訴訟が終了した後において、その訴訟の原告が右訴訟を理由として右命令の執行停止を求め得ないことはもちろんであるから、本件において、前記不動産引渡命令の執行停止決定を取消した原決定は結局正当で、本件抗告は理由がない。

(内田 鈴木貞 入山)

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